演目の紹介                    →「演目の一覧」に戻る

花筐(はながたみ)

【分類】四番目物(雑能)

【作者】世阿弥

【主人公】前シテ:照日ノ前、後シテ:照日ノ前

【あらすじ】(仕舞〔クセ〕の部分は下線部です。)

越前国(福井県)味真野にいた大迹部皇子は、皇位を継承することになり、急遽、都に上ります。皇子は寵愛していた照日ノ前のもとに使者を送り、別れの文と花筐を届けます。その文を読んだ照日ノ前は形見の花筐を抱いて悲しく我が家へ戻って行きます。

<中入>

その後、皇子は継体天皇となられ、大和国(奈良県)玉穂に都を移して、政を行っていましたが、ある日、紅葉狩に出かけられます。一方、照日ノ前は恋慕のあまり心が乱れ、侍女を伴ってはるばる都へとやって来ます。そして、たまたま御幸の行列に行き会いますが、朝臣に見苦しい狂女として払いのけられ、そのはずみで花筐を打ち落とされます。照日ノ前は、それは帝の花筐であるといって咎めます。朝臣にその理由を尋ねられ、皇子とのかなわぬ恋の悲しみを嘆き、李夫人の故事を物語り、自分の思慕の情を歌えます。天皇がその花筐を取り寄せてご覧になると、確かに見覚えのある品なので、照日ノ前に狂気を収め、もとどおり側に仕えよとの御言葉に、喜んで一緒に皇居へと向かいます。

【詞章】(仕舞〔クセ〕の部分の抜粋です。)

帝ふかく嘆かせたまいつつ。そのおん形を.甘泉殿の壁に写し。われも画図に立ち添いて.明け暮れ嘆きたまいしに.されどもなかなか。おん思いは増されども。もの言い交わす事なきを。深く嘆きたまえば。李少と申す太子の.幼なくましますが.父帝に奏したもうよう.李夫人は元はこれ。上界の嬖妾。歌吹国の仙女なり。一旦人間に。生るるとは申せどもついに元の.仙宮に帰りぬ。泰山府君に申さく。李夫人の面影を。しばらくここに招くべしとて。九華帳の内にして.反魂香を.焚きたもう.夜更け人静まり.風すさまじく。月秋なるに.それかと思う面影の。あるかなきかにかげろえば。なおいや増しの思い草。葉末に結ぶ白露の。手にも溜まらで程もなく.ただ徒らに消えぬれば。縹緲悠揚としてはまた尋ぬべき方なし。悲っさのあまりに.李夫人の住み慣れし。甘泉殿を立ち去らず。空しき床をうち払い。古き衾古き枕.ひとり袂を片敷き。

 

 

[ ホーム ] [ 能のミニ知識 ] [ 能の演目の紹介 ]