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雲雀山(ひばりやま)

【分類】四番目物 (雑能)

【作者】不詳

【主人公】前シテ:乳母の侍従、後シテ:乳母の侍従

【あらすじ】(仕舞の部分は下線部です。)

横佩の右大臣豊成公は讒言を信じ、わが子の中将姫を大和国(奈良県)と紀伊国(和歌山県)の国境にある雲雀山で殺してしまうよう家臣に命じますが、家臣はあまりの痛ましさに姫を殺すことができませんでした。雲雀山の庵では中将姫が乳母の侍従によってかくまわれています。侍従は四季折々の花を摘んでは、人里に出てこれを商い、それによって姫を養っています。今日もまた花を売りに出るように土地の者が侍従に言いますので、侍従は姫に挨拶して里へ降りていきます。

 <中入>

一方、横佩の右大臣豊成は狩装束で雲雀山に鷹狩りにやって来ます。そこへ花売りの侍従も来ます。それを見つけた豊成の従者が問いかけると、花を買ってほしいと頼み、花に託して身の上話をそれとなく語り、さらに山奥に隠れ住んで、霞網にかかった小鳥のように身動きならぬ姫が痛ましいと狂ったように舞います。豊成はこの花売りこそ姫の乳母であることを知り、姫の行方を尋ねます。侍従は姫はすでになくなったと偽りますが、豊成の前非を悔いた真心に打たれ、山の庵へと案内します。思いがけぬ再会に、父娘は手を取り合って喜び、奈良の都に連れ立って帰っていきます。

【詞章】(仕舞の部分の抜粋です。)

思え桜色に。染めし袂の惜しければ。衣がえ憂き。今日にぞありける。それのみかいつしかに。春を隔つる杜若。いつ唐衣はるばると。面影のこすかおよ鳥の。鳴きわたる声まで.身の上に聞くあわれさよ。かくてぞ花をめで。鳥をうらやむ人心。思いの露も深み草の。しげみの花衣。野を分け山に出で入れども。さらに人は白玉の。思いは内にあれど、色になどや現われぬ。さるにても.馴れしままにていつしかに。今は昔に奈良坂や。児の手柏のふた面。とにもかくにも古里の。よそ目になりて葛城や。高間の山の峰つづき。ここに紀の路の境なる。雲雀山に隠れいて。霞の網にかかり。目路もなき谷陰の。もずの草ぐきならぬ身の。露におかれ雨にうたれ。かくても消えやらぬ。御身のはてぞいたわしき。

 

 

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