演目の紹介                    →「演目の一覧」に戻る

柏崎(かしわざき)

【分類】三番目物 (鬘物)

【作者】世阿弥

【主人公】前シテ:柏崎某の妻、後シテ:柏崎某の妻(狂女)

【あらすじ】(仕舞〔道行〕の部分は下線部です。)

越後国(新潟県)の柏崎の領主某の従者が鎌倉から帰国し、主人である柏崎の領主が鎌倉で急逝したことを領主の妻に報告します。それを聞いた領主の妻は夫の死を受け入れることなどできないと嘆き悲しみます。さらに、父の死を嘆いて出家するという息子花若からの手紙を目にし、夫と息子という愛する二人を一度に失った領主の妻の嘆きは、わが子への恨みに変わります。しかし、その一方でわが子を守り給えと神仏に祈るのでした。

 <中入>

時が過ぎ、信濃国(長野県)の善光寺で、僧の姿をした花若が、住職に伴われて如来堂に向っています。阿弥陀如来へのお勤めを始めて、今日がちょうど満参日に当たるのです。そこへ一人の狂女が現れます。この女こそ、夫の成仏を願い、子の無事を願っているうちに、仏に導かれるようにこの善光寺へやって来た柏崎の領主の妻でした。如来堂に上がり、夫の成仏を祈念しようとする狂女に、住職は女人の身で如来堂に上ることは叶わぬゆえ、早々に立ち去るよう伝えます。しかし、狂女は如来堂から立ち去ろうとせずに、供物として持参した夫の形見の烏帽子と直垂を取り出して、自らの心の内を阿弥陀如来に訴え始めます。その狂女の一途な様子を見ていた花若は、自分こそ息子であると狂女の前に名乗り出ます。互いの変わり果てた姿にしばし呆然とする母と子ですが、それが現実であることを知ると、心の底から互いの無事と再会を喜び合うのでした。

【詞章】仕舞〔道行〕の部分の抜粋です。)

越後の国府に着きしかば。越後の国府に着きしかば。人目も分かぬわが姿。いつまで草のいつまでと。知らぬ心は麻衣。うら遥々と行くほどに。松陰遠く寂しきは。常盤の里の夕べかや。われにたぐえて。あわれなるはこの里。子ゆえに身を焦がしては、野べの木島の里とかや。降れども積もらぬ淡雪の。浅野というはこれかとよ。桐の花咲く井の上の。山を東に見なして。西に向かえば善光寺。生身の弥陀如来、わが狂乱はさて置きぬ。死して別れし。夫を導きおわしませ。

 

 

[ ホーム ] [ 能のミニ知識 ] [ 能の演目の紹介 ]