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車僧くるまぞう

【分類】五番目物 (切能)

【作者】不明

【主人公】前シテ:山伏、後シテ:天狗太郎坊

【あらすじ】(仕舞の部分は下線部です。)

いつも牛のいない破れ車に乗って往来しているので車僧」と呼ばれている奇僧がいました。ある雪の日、車僧はいつものとおり車に乗り、嵯峨野から西山の麓へやって来て、四方の雪景色を眺めて楽しんでいます。するとそこへ、愛宕山の天狗が、山伏姿で現れ、この僧の奇行につけ込んで魔道に誘惑しようと、禅問答をしかけますが、軽くあしらわれてしまいます。そこで、自分は太郎坊だと名乗り、再度の挑戦を約して、雲に乗って飛び去ります。

<中入>

その後、溝越天狗と仇名される木葉天狗が出て来て、なんとか車僧を笑わせようと、さまざまなことをしますが、どうにもならず、これも逃げ去ってゆきます。やがて先の太郎坊が、今度は大天狗の姿で現れ、行くらべをいどみます。ところが、車僧の乗った牛もつけていない車は、太郎坊がいくら打っても動かなかったのに、車僧が払子を一振りするだけで、自在に雪の山路を疾駆します。太郎坊はその法力に驚き、どうおどかしても自若としている態度に恐れ入り、仏法を妨げるのをあきらめ、ついには敬意を表して合掌して消え失せます。

 

【詞章】(仕舞の部分の抜粋です。)

不思議やなこの車の。不思議やなこの車の。ゆるぎ巡りて今までは。足弱車と見えつるが。牛も無く人も引かぬに。易す易すと遣りかけて飛ぶ。車とぞなりたりける。小車の山の陰野の道すがら。法の道の辺遊行して。貴賎の利益なすとかや。所から。ここは浮世の嵯峨なれや。雪の古道跡深き。車のわだちは足引の。大雪にはよも行かじ。げに雪山の道なりと。法の車路平かに。行くか行かぬかこの原の。草の小車雨添えて。打てども行かず。止むれば進むこの車の。法の力とて。嵯峨小倉大井嵐の。山河を飛び翔って。けばくすれども騒がばこそ。まことに奇特の車僧かな.あらたっとや恐ろしやと.がしょうをやわらげ大天狗は。合掌してこそ.失せにけれ。

 

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