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室君(むろぎみ)

【分類】四番目物 (雑能)

【作者】不詳

登場人物

登 場 人 物 装  束

シテ

韋提希夫人 増女

襟(紅白)、箔、色大口、舞衣、腰帯、鬘、鬘帯、薄垂、天冠、白骨紅入中啓

ツレ 室君 小面 襟(赤)、箔、大口、腰帯、鬘、鬘帯、唐織坪折、白骨紅入中啓、幣
トモヅレ 室君二人

小面

襟(赤)、箔、鬘、鬘帯、唐織
ワキ 室明神神官 厚板、大口、繍狩衣、腰帯、黒風折烏帽子、中啓
間狂言 室津の長 縫箔、女帯、びなん、扇

【あらすじ】 (仕舞〔キリ〕の部分は下線部です。)

播州(兵庫県)室明神の神職が神事を執り行おうと、室津の遊女たちを神前に集まらせたところ、室君達は梅の香が匂う春の夜の興趣を歌いつつ、船に乗ってやって来ます。神職の命により、棹の歌を歌い、神楽を奏していると、室明神が女体の姿で現れます。そして、感涙に袖をぬらしていると、夜も明けはじめ、明神は空高く昇っていくのでした。

【詞章】(仕舞〔キリ〕の部分は下線部です。)  

これは播州室の明神の社人にて候。まことに天下泰平国土安全にして。何事もおぼしめすままの御代にて候。かかる目出たき砌には。室君の祭を執り行い候間。先例にまかせ。祭をとりおこなわねばやと存じ候。いかに誰かある。急ぎ室君達に神前へ御参りあれと申し候え。室の海。室の海。浪ものどけき春の夜の。月の御舟も竿さして。霞む空は面白やな。霞む空は面白しろや。梅が香の。梅が香の。磯山遠く匂ふ夜は。いで船も心ひく。花ぞ綱手なりける、この花ぞ綱手なりける。見申せば皆みな棹を持ち給いて候もどに。棹について棹の歌を御うたい候え。棹の歌うたう浮世の、一ふしを。歌う浮世の一節を。夕波千鳥声そえて。友呼びかわすあま乙女。恨ぞまさる室君の。ゆく舟や慕うらん。朝妻舟とやらんは。それは近江の海なれや。我も尋ねたずねて。恋しき人に近江の。海山も隔たるや。あじきなや浮き舟の。棹の歌をうたわん。水馴棹の歌うたわん。たち縫わぬ。衣きし人もなきものを。なに山姫の。布さらすらん。棹の山風のどかにて。日影も匂う天地の。ひらけしもさしおろす。棹のしただりなるとかや。然れば春すぎ夏たけて。秋すでに暮れゆくや。時雨の雲もかさなりて。嶺白妙に降りつもる。越路の雪の深さをも。知るやしるしの棹たてて。豊年月の行く末を。はかるも棹の歌。うたいていざや遊ばん。棹の歌御うたい一段めでとう候。いつもの如く神前にて神楽を参らせられ候え。こゝとてや。室山陰の神垣の。加茂の宮居は。ありがたや。

<神楽>

月かげの。月影の。更けゆくままに。風おさまれば。ふしぎや異香薫じつつ。和光の垂跡韋提希夫人の。姿をあらわし。おわします。玉のかんざし羅綾のたもと。

<中ノ舞>

玉のかんざし羅綾のたもと。風にたなびき瑞雲に乗じ。所は室の。海なれや。山はのぼりて上求菩提の機をすすめ。海はくだりて下化衆生の相を現し五濁の水も。実相無漏の大海となつて。花降り異香薫じつつ。相好まことに肝に銘じ。感涙袖をうるほせば。はや明けゆくや春の夜の。はや明け方の雲にのりて。虚空にあがらせ。給いけり。

 

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