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七騎落しちきおち

【分類】四番目物 (雑能)

【作者】不明

【主人公】シテ:土肥実平

【あらすじ】(舞囃子の部分は下線部です。仕舞の部分は斜体の部分です。)

治承4(1180)年8月、石橋山の合戦に敗れた源頼朝は、他日を期して安房上総の方へ落ちのびようとします。そして、一行の軍師格の土肥実平に、船の用意を命じます。ところが、いざ漕ぎ出そうとして船中を見ると、主従の人数が八人でした。頼朝は、祖父為義が九州へ落ちた時も八騎であり、父義朝が近江へ敗走した時も八騎であったことを思い出し、不吉の数だから、一人を降ろすように命じます。実平は、いずれも忠義の者ばかりで選びかねた末、最長老の岡崎義実を降ろそうとしますが、彼は承知しません。やむなく我が子遠平を下船させ、一行は親子の別れに同情しつつも、船を沖に進めます。遠ざかる陸を見ると、敵の数は多く、遠平は討死するに違いないと、実平は心ひそかに悲しみます。翌日、沖合で和田義盛が頼朝の船を捜し出し、声をかけてきます。実平は義盛の心を試すため、主君はいないと偽ります。すると、義盛はそれでは生きているかいがないと、腹を切ろうとするので、これを止め、近くの浜辺に船を寄せて頼朝に対面させます。そこで、義盛は実平に向い、遠平は自分が助けて来たと言い、父子を引き合わせます。実平は夢かとばかり喜び、父子は抱き合います。そして一同は酒宴を催し、実平はすすめられて喜びの舞をまいます。

【詞章】舞囃子の部分の抜粋です。仕舞の部分は下線部です。)

ご芳志申すもなかなか愚かなり。またただ今某あまりの嬉しさに涙を流して候を。さこそ若き人々のおかしとおぼしめすらんさりながら。嬉し泣きの涙は。嬉し泣きの涙は。何か包まん唐衣。日も夕暮れになりぬれば。月の盃とりあえず。主従ともに喜びの。心うれしき。酒宴かな。めでたき折なれば土肥殿ひとさしおん舞い候え。心うれしき。酒宴かな。

<男舞>

かくて時日をめぐらさず。かくて時日をめぐらさず。西国のつわもの馳せ参ずれば。ほどなくおん勢二十万騎になり給いつつ。たなごころにて治め給えるこの君の御代の。めでたきためしも実平正しき忠勤の道にいる。実平正しき。忠勤の道にいる。弓矢の名をこそあげにけれ。

 

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