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竜田(たつた)

【分類】四番目物 (雑能)

【作者】金春禅竹

【主人公】前シテ:巫女、後シテ:竜田姫の神霊

【あらすじ】(舞囃子の部分は下線部です。仕舞〔キリ〕の部分は斜体です。)

日本六十余州の神社仏閣に納経を志す廻国の僧が、奈良の社寺を拝し終え、続いて河内国(大阪府)へと急いでいます。途中、竜田明神に参詣のため、竜田川を渡ろうとすると、一人の巫女が現れ、「竜田川 紅葉乱れて 流るめり 渡らば錦 中や絶えなん」という古歌をひいて止めます。僧が、それは秋のことで、今はもう薄氷が張っている頃なのにと言うと、巫女は更に「竜田川 紅葉を閉づる 薄氷 渡らばそれも 中や絶えなん」という歌もあると答え、別の道から社前に案内します。そして、霜枯れの季節にまだ紅葉しているのを不審に思う僧に、紅葉が神木であることを語ります。さらに竜田山の宮廻りをするうちに、巫女は、自分は竜田姫の神霊であると名乗って社殿の中へ姿を消してしまいます。

<中入>

その夜、僧が社前で通夜をしていると、竜田姫の神霊が現れて、明神の縁起を語り、あたりの風景を賞美したあと、神楽を奏して、虚空へと上っていきます。

【詞章】(舞囃子の部分の抜粋です。仕舞〔キリ〕の部分は下線部です。)

しかれば当国宝山に至り。天地治まるみ代のしるし。民安全に豊なるもひとえに当社のおん故なり。梢の秋の,四方の色。千秋のみ影。目前たり。年ごとに.もみじ葉流る竜田川。港や秋の泊りなる。山も動せず.海辺も波静かにて。楽しみのみの秋の色。名こそ竜田の.山風も静か.なりけり。しかれば代代の歌人も。心を染めてもみじ葉の。竜田の山の朝霞。春は紅葉にあらねども。ただ紅色に愛でたまえば。今朝よりは。竜田の桜色ぞ濃き。夕日や花の。時雨なるらんと。詠みしも紅に心を染めし詠歌なり。神南備の。三室の岸やくずるらん。竜田の川の。水は濁るとも.和光の影は明らけき。真如の月はなお照るや。竜田川.紅葉乱れし跡なれや。いにしえは錦のみ今は氷の下紅葉。あら美しや色色の。紅葉襲の薄氷。渡らば.紅葉も氷も。かさねて中絶ゆべしや.いかで今は渡らん。さるほどに夜神楽の。さるほどに夜神楽の。時うつり頃去りて。宜祢が鼓も数至りて。月も霜も白和幣。ふり上げて.声澄むや。謹じょう。再はい。

<神楽>     

ひさかたの。月も落ちくる。滝まつり。波の.竜田の。神のみ前に。神のみ前に。散るはもみじ葉。すなわち神の幣。竜田の山陰の。時雨降る音は。さっさっの鈴の声。立つや川波は。それぞ白木綿。神風松風吹き乱れ吹き乱れ。もみじ葉散り飛ぶ木綿附鳥の。み祓も幣も。ひるがえる小忌衣。謹上再拝再拝再拝と。山河草木国土治まりて。神はあがらせ.たまいけり。

 

 

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