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融(とおる)

【分類】五番目物 (切能)

【作者】世阿弥

【主人公】前シテ:汐汲みの老人、後シテ:源融の霊

【あらすじ】(仕舞の部分は下線部です。)

東国から京へ上った諸国一見の旅僧が六条河原の院を訪れ有り、休んでいると、そこへ田子を担った老人がやって来ます。そうは、ここは海辺でもないのに汐汲み姿をしているのはどうしてかと尋ねます。すると老人は、ここは塩釜の浦を写した海辺だと答え、その昔に左大臣源融が塩釜の浦を模して造園し、毎日難波の浦から海水を運ばせて、塩を焼かせるという風流を楽しんだが、今はすっかり荒れ果てていると語ります。そして京の山々の名所を指し示しながら教えると、そろそろ汐を汲む頃合いだと見て消え失せます。

<中入>

僧は来合わせたこの辺りの者に、老人は源融の霊だろうと教えられ、弔うよう勧められます。僧は、その夜は夢の出会いを期待しながら旅寝をします。すると貴人姿の融大臣が現れ、名月の下で舞をまい、夜明けと共に消えて行きます。

【詞章】(仕舞の部分の抜粋です。)

それは西岫に。入日のいまだ近ければ。その影に隠さるる。たとえば月のある夜は。星の薄きがごとくなり。青陽の春の始めには。霞む夕べの遠山。眉墨の色に三日月の。影を舟にもたとえたり。また水中の遊魚は。釣針と疑い。雲上の飛鳥は。弓の影とも驚く。一輪もくだらず。万水ものぼらず。鳥は池辺の木に宿し。魚は月下の波に伏す。聞くとも飽かじ秋の夜の。鳥も鳴き。鐘も聞こえて。月も早。影傾きて明け方の。雲となり雨となる。この光陰に誘われて。月の都に。入りたもう粧い。あら名残おしの面影や。名残おしの面影。

 

 

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